2016年1月、平塚市博物館で特別展「千枚のお札」が開催されました。これは、秦野市堀山下の旧家に保存されていた大量のお札が寄贈されたことを受けて開かれた展覧会です。

 寄贈者のO氏から「展示の中に、あなたが調べている秦野二十四所地蔵尊(註1)に関係のあるお札がある」との知らせをいただき、さっそく見学に伺いました。

 展示されていたお札(資料1参照)は縦24.7cm、横11.6cm。蓮華台の上に地蔵菩薩坐像が描かれ、脇に「堀村北ノ堂」と記されていました。さらに上部には御詠歌があり、
「御仏を たづねてここゑ 北のどふ かねよりつとふ のりのこゑかし」
と書かれていました。この御詠歌は、秦野二十四所地蔵尊の第15番に記されているものと、一部違いますが第15番札所のお札と確信しました。

堀村北の堂は、現在の秦野市堀山下地区にかつて存在したお堂です。明治の神仏分離令に伴う廃仏毀釈の中で廃堂となったものと思われます。跡地や本尊の所在については調査中ですが、今のところ確かな手がかりは見つかっていません。

 そうした中で、このお堂のお札が平塚市博物館に寄贈され、さらに一般公開されたことは、奇跡に近い巡り合わせと感じています。いつの日か、この「幻のお札」が秦野の地に里帰りし、市民の皆さまにご覧いただける日が訪れることを願っています。

1:秦野歴史おこしの会・会報第43号(2016年9月)「秦野二十四所地蔵尊を探す」

資料1 お札(平塚市博物館所蔵 受入番号2012065-010-28